1)養分の供給
堆肥には窒素・リン・カリウム・カルシウム・マグネシウムなどの多量要素だけでなく、鉄・亜鉛・銅・マンガン・ホウ素などの微量要素も含まれている。
そのため作物に対する総合的な養分供給源になるが、科学肥料と異なる点は窒素などの養分供給が緩効的であるとともに、連年施用することで
その効果が累積していく点である。
2)土の物理性の改善
土壌中における有機物の分解過程では、微生物による分解を受けにくい土壌特有の腐食物質が形成される。この腐食物質及び微生物や根から分泌される粘質物が接着剤となり、土壌粒子が互いに結合して直径数ミリ程度の土壌団粒を形成する。
土壌の団粒化が進むと、粒子間の隙間の割合(孔隙率)が増大する。孔隙率が大きいほど土壌がやわらかく、耕転が容易になり、作物の根も伸長
しやすくなる。
また、団粒間には比較的大きな孔隙が形成され、過剰な水が排水され、通気性が良好になり、作物根の伸長が確保される。
一方団粒内部には毛管力の強い微小な孔隙があるため保水性も維持される。このように土壌団粒の形成は「水持ち」と「水はけ」という相反する
機能の両立を可能にする重要な役割を持っている。 |
|
3)土の化学性の改善
我が国の火山灰土壌や酸性土壌には活性アルミニウムが多く含まれ、施用したリン酸が強く吸着固定され難溶化して作物が吸収できなくなったりする。
堆肥を施用すると腐植酸、有機酸、各種糖類などが気レート作用によって活性アルミニウムと結合し、その害作用を抑制する。
そのため堆肥の連用により土壌のリン酸吸収係数が減少し、可給態リン酸が増加する効果が認められる。
さらに堆肥の施用によって土壌の陽イオン交換能(CEC)が増大する。CECは土壌の粒子が静電気的に吸着できる陽イオンの量を示している。
土壌構成物のうち粘土鉱物と土壌有機物には陽イオン交換能があり、陽イオンとして存在する養分(アンモニア・カルシウム・マグネシウムなど)が
雨水によって洗い流されないよう土壌中に保持する能力(保肥力)がある。
|
牛フン堆肥のみ |
牛ふん堆肥+化学肥料
2:1 |
牛ふん肥料+化学肥料
1:1 |
牛ふん堆肥+化学肥料
1:2 |
化学肥料のみ |
4)土壌の生物性の改善
土壌中の生物は有機物を栄養源としているため、長期間にわたる化学肥料(無機物)だけの施用では絶滅してしまう。
堆肥を施用すると有機物を栄養源として土壌微生物が増殖し、有機物の分解に関与する土壌動物、糸状菌、放線菌、細菌など多様な生物群が棲息するようになる。さらにこれらの生物郡はそのサイズに応じて団粒内外に主要な棲息場を確保し、豊かな生物相が形成され、土壌の生物的緩衝能力が増大する。
5)病害虫の抑制
施用した有機物は土壌微生物を増殖させるとともに土壌微生物の活動を盛んにして病原菌の活動を阻害し、病害の発生を少なくする。さらに豊かな生物相がもたらす生物的緩衝作用や土壌の物理性・化学性の改善により作物の土壌病害に対する抵抗性を高める。
6)作物品質の向上
有機物の施用により野菜類の糖、ビタミン等の品質成分の増加が期待され、そのメカニズムとして土壌団粒の形成機能や窒素の緩効性に伴う低水分ストレスや低窒素供給が作物体内の糖・ビタミン類の増加をもたらすと考えている。
※堆肥施用による農作物の変化(茨城県高根沢町の農家アンケート結果)
水 稲 |
野 菜 |
果 樹 |
(33%) 根の張りが良くなった |
(33%) 根の張りが良くなった |
(75%) 糖度等が向上した |
(25%) 食味が向上した |
(23%) 秀品率が向上した |
(25%) 品質が向上した |
(17%) 株ががっちりしてきた |
(20%) 茎が太くがっちり育つ |
(25%) 枝が太くがっちり育つ |
(17%) 冷害による被害が軽減 |
(17%) 収量が向上した |
|
|
|
※堆肥施用等の相違によるレタスの生育状況(H13年) |
|
化学肥料区 |
堆肥単年施用区 |
堆肥8年施用費 |
資料提供 財団法人 畜産環境整備機構 畜産環境技術相談室長 本多 勝男 氏 講演資料より抜粋
|