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  有用な土づくり資材である畜産由来の堆肥の利用促進を図るため、堆肥の品質向上と生産技術レベルの底上げを目的とし、熊本県・熊本構築連携推進協議会、熊本県農業共同組合中央会・熊本県経済農業共同組合連合会 熊本県畜産協会が主催して実施されたコンクールである。

      ●生産技術コンクールの部 受賞者一覧
熊本県賞 菊池市 富納堆肥生産組合
JA中央会長賞 熊本市 西里とれたて市
経済連合会長賞 山鹿市バイオマスセンター
耕畜連携推進協議会長賞 
  耕種審査員の部 露地野菜  富納堆肥生産組合
  施設園芸  あまくさ農業協同組合新和堆肥センター
  耕畜連携推進の部 熊本市農業協同組合  柑橘部会
  やつしろ農業協同組合 生姜部会
        ※審査結果及び講評

      ●コンクールベスト10
順位
地域名
参加者名
代表社名
主な原材料
1
菊池
富納有機生産組合 東 敏則 牛糞・剪定くず
2
熊本
西里とれたて市堆肥生産組合 古田 勇熊 牛糞・剪定くず
3
鹿本
山鹿市バイオマスセンター 中嶋 憲正 (固液分離)牛・豚糞・もみがら
4
球磨
JAくま人吉堆肥センター 組合長 平田 国明 牛、豚糞、のこくず、バーク
5
天草
JAあまくさ 新和堆肥センター 武部 満 牛、豚糞、のこくず
6
上益城
JAかみましき堆肥センター 梅田 穣 牛糞、粉砕もみがら
7
菊池
木原野堆肥生産組合 福田 和弘 牛糞、のこくず
8
葦北
湯野牧場 湯野 朴 牛糞、バーク
9
天草
苓北町堆肥センター 酒井 孝 (普通堆肥)牛糞、バーク、汚泥
10
阿蘇
阿蘇市堆肥センター 丸山 信義 牛糞、野草
 
      ●審査講評
1.審査概要
   
本年の出品点数は生産技術コンクール部門33点、スキルアップの部93点、全体で126点の出品があり、このうちコンクール部門の33点について「平成18年度熊本県堆肥生産技術コンクール実施要領」に基づいて審査を実施した。
(1)出品堆肥のサンプル収集及び成分分析
  参加申し込み堆肥センターについて各地域振興局の農業普及指導課立ち会いによる出品堆肥の採取を行い、経済連土壌分析センターにおいて成分分析を実施した。
(2)書類、現物審査
  参加申込書に記載された堆肥生産情報と成分分析結果を基にして書類審査を実施するとともに 「堆肥品質判定基準(熊本県、17年度一部改訂)」に基づき、腐熟度及び品質の判定を実施した。
(2)現地審査
  書類と現物審査の結果から上位3点の出品堆肥については実際の堆肥の生産状況、施設の運営状況や環境保全への取り組み状況を現地で審査した。
(3)特別審査員による評価
利用する側の視点から堆肥の品質評価を行うため堆肥の利用に直接関わる農家、JA営農指導員を特別審査員として選定し、腐熟度と利用価格の面から審査を行った。
(4)総合評価
  書類、現物審査、成分分析結果、現地審査の結果を総合的に判断して上位入賞堆肥を決定した。
2.審査結果
  以上の審査結果から上位入賞の堆肥化施設として富納有機生産組合及び西里とれたて市堆肥生産組合、山鹿市バイオマスセンターを選定し、また、総合得点が上位で特別(耕種)審査員の評価が高かった富納有機生産組合とJAあまくさ新和堆肥センターを審査員特別(耕種審査員)賞として選定した。
2.講評
 

(1)受賞堆肥センター
「富納有機生産組合」は菊池市泗水町の酪農家を主体として運営する堆肥化施設で平成12年度堆肥コンクール共同利用堆肥センターの部での熊本県賞受賞に続いての受賞となりました。
  ふん尿混合のスラリーに剪定枝チップを混合してスクープ式発酵施設と堆積発酵により副資材や電気代等のランニングコストを低く抑えながら高品質な堆肥が製造されております。
  「西里とれたて市堆肥生産組合」は地元野菜の直売所の耕種農家で利用する堆肥を生産するため地域内の畜産農家(酪農及び肥育)、造園業者と共同で設立され、平成14年度から堆肥の生産を始めております。造園業者から持ち込まれる剪定枝チップを副資材として用い、酪農のふん尿はスラリーを剪定枝チップで水分調整で行っています。堆積発酵とタイヤショベルによる切り返しでこまめな管理により良質な堆肥が生産され、最近では組合外での利用が急増しています。
  「山鹿市バイオマスセンター」は山鹿市鹿本町にある有機資源リサイクル施設であり、平成17年10月から堆肥の製造が始まったばかりの新しい施設です。地域内の牛や豚のふん尿や家庭から排出される生ゴミを回収し、堆肥の生産、メタンガスによる発電、メタン消化液を用いた液肥の生産を行っています。
  今回は豚のふん尿、酪農のスラリー、生ゴミを混合・固液分離して固形分を発酵させた堆肥が受賞の対象となっています。高性能の固液分離機により適正な水分状態に調整され、独立行政法人九州・沖縄農業研究センターの指導を受けて堆積高さ、発酵温度の確保等基本に忠実な製造方法により 運転開始1年にして高品質堆肥の生産が実現しております。
特別(耕種)審査員賞は富納有機生産組合とJAあまくさ新和堆肥センターの2つの施設が受賞されました。富納有機生産組合は熊本県賞とのダブル受賞であり、JAあまくさ新和堆肥センターは昨年度の経済連会長賞に続いての受賞となっております。いずれも高品質の堆肥を安定的に生産している施設ですが特に利用者のニーズを考えて製造を行っていることが製品の品質に反映しているのではないかと考えられます。
  受賞された各堆肥センターはいずれも高品質化のための工夫をこらし、温度や水分状態等発酵状態の細かな管理を行い、完熟で作物に対する安全性の高い堆肥の生産に努められています。今後も他の堆肥センターのモデルとなるようにより一層の品質向上への努力をお願いします。
(2)全体講評
  今回の堆肥生産コンクールは昨年度に引き続き、コンクール部門、耕畜連携部門の3部門の構成で実施しております。今回の出品点数は126点で平成16年以来100点を超える多数の出品を頂いき、堆肥を生産する側の品質向上に対する意識が根付いていることが実感されました。
  出品堆肥は殆どが中熟以上の堆肥であり、完熟と判定された堆肥の割合は57%と昨年以上にレベルの高い中での審査となりました。県内の堆肥化施設の全体的な品質向上と各施設での努力のあとがうかがえました。

審査を行った中で全体的な傾向として
・外観品質が良好なものが多く、特に形状や臭気、水分は大半が高得点であり、外観で明らかに熟度 が足りないものがあまり見られなかった。また、発酵方式毎の堆積期間と通気や切り返し回数は完熟 化に充分な使い方をされており、大部分の堆肥化施設では基本的な堆肥化技術は向上していると考えられた。
・特別審査員の審査から考察すると、野菜では完熟で形状が細かいものが好まれ、施設では特にカリ ウムを筆頭に肥料成分が低いものが好まれる傾向が伺えた。果樹や茶などの永年作物では形状が 粗く土壌の膨軟化や排水性の向上が期待されるものが好まれる傾向が伺えた。
・問題点として、乳牛糞を原料とした堆肥の中には水分が高い堆肥があり、豚糞や鶏糞を原料とした堆肥では逆に水分が低いものが多く見受けられた。このような堆肥は色相や臭気も低く評価され、発 芽試験の成績も低くなっており、発酵期間中の水分が適正でなかったために発酵が充分行われなかったのではないかと考えられた。

そのなかで上位入賞の堆肥化施設では
・堆肥化の基本技術である開始時の水分調製、堆積する高さ、切り返し回数を忠実に守って良質な堆肥に仕上げている。
・副資材に剪定チップ等の分解しやすい有機性廃棄物を用い、発酵条件を改善し、良質な堆肥を生産している。
  等が高品質堆肥の生産に寄与しているのでないかと感じられました。
  堆肥生産技術コンクールは堆肥共励会時代も含めて今回で10年目と節目の年を迎えました。この間、出品点数も増加し、堆肥の品質も着実に向上していると実感できる結果が得られています。
  また、10年間のデータの蓄積により県内堆肥の品質や成分値の傾向も明らかになり、耕種側でも分析データに基づいた適正な利用ができるようになったのではないかと考えられます。
  作物を安定的に生産するためには土作りは不可欠のものであり、有機物施用は土作りの中心的な技術です。そのためにこれからも耕種側での堆肥の利用を進めていく必要があります。
  本コンクールの結果をそれぞれの堆肥センター及び地域で活用され、良質堆肥の生産と流通により耕畜連携が順調に伸展していくことを希望して講評と致します。


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